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徹底した⾼⾳質へのこだわりをキーマンが語る

ライブ⾳楽配信「MUSIC/SLASH」の
⾼⾳質を⽀える技術とは?

取材記事提供元:PHILE WEB(インタビュアー:岩井 喬/写真:井上良⼀/構成:編集部)


■配信⽤のミックスは、会場⽤のミックスとは全くの別物

岩井︓ライブのリアルタイム配信を行う時、実際に現場ではどのような動きをされているのか、教えていただけますか? 会場用のミキシング・コンソールを共用したりするのですか?

千葉︓いや、配信用の機材は会場PAの機材とは別に用意します。会場用の機材は会場にきたオーディエンスのための音を作るものですので、私たち配信サイドは、ステージ上の音声ラインを分岐させていただき、配信用にもうひとつのミキシング・コンソールを立ち上げ、会場PAとは異なるミックスを行っています。

ライブ会場で配信⽤ミックスを⾏うことを想定したシステム。⼿前がミックスを⾏うミキシング・コンソールで、奥にあるのがミックスした⾳と映像を合わせ、実際に配信を⾏う機材⼀式

⾕⽥︓ライブ当日はもちろんですが、事前のリハーサルにも立ち会って、実際の機材でミックスのあたりもつけながら、アーティストの特性に合わせた音を作り込んでいくところから一緒にやっているんです。2ミックス(2chにダウンミックスした最終段階に近い音源)をもらって、それを配信して終わりというわけではありません。

エムスラ代表の⾕⽥光晴⽒の⾳へのこだわりが、あらゆる⾯で⾼⾳質を⽀える

千葉︓そもそも会場用のミックスは、反射などの要素を考慮して、その会場に合わせた音場にしているので、そのまま配信用にダウンミックスして聞いても、リスナーがいつもテレビやオーディオで聴いているような音にはなりません。音作りも過剰な低音が出ていないか、それでいて迫力が感じられるか、歌詞がきちんと聞き取れるか、といった部分に重点を置いてミックスしていますので、配信にふさわしい音とは言い難いと思います。

一方、配信用のミックスは、低域から高域まで綺麗に満遍なく音を出すことを心掛けています。つまり、まさに配信専用に、エムスラ用に調整されたミックスだと思います。だから会場と配信のミックスは全くの別物です。

岩井︓配信用のミックスはアーティストも確認されるのですか?

千葉︓そうですね。アーティストはもちろんですが、事務所やプロダクションの方には確認していただいています。こだわりの強いアーティストは確認される方もいらっしゃいますね。


■音に説得力を与えるのは、オペレーターの腕やセンス

岩井︓PA系のデジタル機材は48kHzでの信号伝送が中心になっていると思いますが、それ以上のサンプリング周波数で動かすことはありますか?

千葉︓担当オペレーターによりますが、自分は基本的には48kHzがほとんどですね。96kHzで動いている機材もありますが、実際ライブだと96kHzで音を出しても、48kHzで出した荒い感じが会場の雰囲気に合っていたり、迫力が感じられたりすることもあります。例えばロックのライブなどですね。逆に音数の少ないアコースティックのライブなどは96kHzでやったら効果を感じられると思います。

岩井︓音楽ジャンルとの相性以外にも、48kHzを選ぶ理由はありますか?

千葉︓慣れていてオペレートしやすい環境であることや、他の機材とのマッチングも含めて、48kHzで動かす方が安心してオペレートできるという点ですかね。それと、32bitで駆動しているのがとても大きいと思います。

⾕⽥︓実際の現場は千葉さんが話した通りなんですが、エムスラとしては、高音質配信プラットフォームとして、もちろん96kHzでの配信を狙っていきたいという気持ちはあります。僕らも12月12日に生配信を予定している坂本龍一さんのピアノコンサートで96kHzのハイレゾ配信を行う予定です。

ただ、色々なハイレゾ配信を聞いてきましたが、配信用途を考えない96kHzのミックスより、配信環境やシステムに最適化された48kHzのミックスの方が、音に説得力があるんですよね。これはもうオペレーターの腕やセンスだと感じています。

あと、96kHzでのハイレゾ配信にすると、対応するDACが必要になるなど、リスナー側もそれに対応した視聴環境を用意しなければなりません。結果として楽しめるリスナーの数も減ってしまう。もちろんクオリティの面など、やるべきだと考えているからチャレンジは続けますが、最終的には48kHzのロスレスと、96kHzのハイレゾ、どちらの方が高音質配信として適しているのかを、じっくり見極めなくてはなりません。

岩井︓96kHzで配信するにしても、それに見合ったやり方を突き詰めなくてはならないということですね。