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特集記事

音元出版編集部が語る
『New Normal(新しい日常・常態)
時代の音の未来』

音楽の視聴媒体がレコードからCD、そしてライブストリーミングの時代へと変化していく中、コロナ禍でより急速に変わっていく音楽市場。これからの視聴媒体はどのように変わっていくのか。今回は、オーディガジェットやAV機器の情報雑誌を出版する『音元出版』の代表取締役社長である永井光晴氏にインタビューを行い、オーディオガジェットの変容や、未来の音楽シーンのあり方、そして、今も昔も変わらない音楽そのものの価値について伺った。

PROFILE
永井 光晴/ ながい みつはる

1967年生まれ。早稲田大学卒。1992年 (株)音元出版入社。『季刊 オーディオアクセサリー』誌の編集部に配属。そののち『AV REVIEW』誌に異動。1998年12月、AV REVIEWの増刊号として『ホームシアターファイル』誌を創刊。1999年7月、オーディオビジュアル・ガジェットのニュースサイト『PHILE WEB』(ファイル・ウェブ)を立ち上げる。2001年3月、『AV REVIEW』誌の編集長に就任。2008年、動画撮影・ミラーレスカメラ時代の幕開けと同時に『デジタルカメラグランプリ』の企画発案、審査会を発足させる。2008年3月31日 取締役就任。2020年7月26日 代表取締役社長に就任。


―『New Normal』時代になっていく音楽業界。
過去から比べ、今はどこに向かっているのでしょうか?

永井:「コロナ禍で音楽シーンが変わった」というのは、よく言われています。でも私は、基本的に“音楽そのもの”は変わっていないと思っているんです。そもそも、『New Normal』という言葉は、経済学的に生まれたものです。でも今年はあくまでコロナウイルス感染予防対策におけるスローガンとして、『New Normal 時代』と、派生的に使われています。

オーディオ的に音楽史を見ていくとわかりやすいのですが。これまで時代時代で活躍してきたオーディオツール(ハードウェア)の変化やその音質について、比較したり語ったりすることはできます。でも、オーディオは所詮、“音楽を聴くための道具”でしかありません。1877年、エジソンが蓄音器を発明して以来150年間、その道具であるオーディオは時代とともにその姿も形も変化を続けてきました。

では、音楽はどうでしょうか。音や音楽というのは、人工的なものではないんですよね。風の音とか、雷の音とか。虫の声なんかもそうです。音楽的なものは、自然の中にもともとあるもので『New Normal時代』だからとか、令和時代だからとか、そういった変化には影響されるものではないと思っています。音楽を楽しむ方法やオーディオデバイスはこれから時代とともにどんどん変化していくのでしょうが、音楽そのものは、ずっと変わらない。

―オーディオデバイスが変化していく中で、これから求められる視聴環境はどんなものなのでしょうか?

永井:いまこの時代のことを考えると、大多数の人たちにとってのオーディオは、スマホとBluetooth、そして、それに対応したヘッドホンやイヤホン、あるいはBluetoothスピーカーがあれば十分なはず。でも、ライブストリーミングによる、リアルタイム動画配信サービスが広まりつつあるいまは、PCやクラウドなど、音楽配信に対応した「ネットワークプレーヤー」が重宝されていますよね。
もちろん、それに伴って、高速Wi-Fi環境なんかも非常に重要なファクターです。

ガジェットマニアたちは、もっと高音質イヤホンやスピーカーに憧れるでしょうし、あるいは、より高音質な「DAコンバーター」(Digital音楽信号をAnalog音楽信号に変換する装置)を求めているはずです。

でも結局、はじめにも言ったとおり、それは全てツールに過ぎません。蓄音器からはじまった“視聴”は、やがてレコードになり、CDになって、そしていまは配信の時代になりました。電気を使って耳に音楽を取り入れるということ自体は何も変わっていないけど、オーディオの姿は変容し、いまあるものがずっと続いていくなんていうのは、あり得ません。それがオーディオの歴史なので。